SATRIアンプAMP-5520レポート

 既に多くの方々にSATRIアンプAMP-5511Kまたは製品版のAMP-5511をお使いいただいていますが、今回はこの上位機あるAMP-5520のご紹介です。AMP-5511との比較を交えてレポートしてみたいと思います。


1.外観

 まず外観から見て行きます。AMP-5520はご覧の通り、ラックサイズほぼいっぱいの大きさです。AMP-5511に比べかなり大きくなっています。上に置いたCDと比較して下さい。幅だけでなく奥行きがさらに長くなり、ほぼTAOC製のラックの奥行きと同じくらいあります。測ってみると、幅470mm、奥行きが366mmあります。大きいので薄型に見えますが、前面パネル部の高さも下から135mmあります。奥行きには、ピンプラグの接続用にもう数センチ必要ですから、その分の余裕も見ておく必要があります。

 操作系は、左端が切り替えスイッチ、中央がボリューム、右端が電源スイッチです。入力切り替えは、通常入力3系統、SATRI-LINKと呼ばれる電流入力2系統が用意されています。SATRI-LINKは、今後開発予定の電流出力タイプのD/Aコンバータ(型番未定)、及び同じく開発予定の電圧/電流出力タイプのSATRIプリ(型番未定)を接続して使用します。メーカーで実験的に電流出力のDACを接続して試聴した結果、一段とクリアーな音になったということです。


システム全体

AMP-5520のアップ


 横から見た状態です。高さは、ラックに充分入るサイズです。両サイドに放熱器がありますが、あまり熱くはなりませんので、ラックの中に入れても大丈夫です。


AMP-5520のサイド

そのアップ


 AMP-5520には、電流入力端子のSATRI-LINKが新設されています。チャネル13は通常の入力です。チャネル45SATRI-LINK入力です。SATRI-LINK端子には、電圧出力のピンプラグを接続してはいけません。

 現在市販されている電流出力プリ、DAC、チャンネル・デバイダーはほとんどありませんが、今後、電流受けのできるSATRIアンプと組み合わせるためにはどうしても必要なものになって行くでしょう。


足回り

SATRI-LINK入力端子の追加


 AMP-5511と比較してみます。正面から見ると、横幅の大きさがわかると思います。横から見ると、奥行きもだいぶ違います。

 AMP-5520のデザインは、AMP-5511と同系統でまとめられていますがさらに豪華になっています。前面パネルはAMP-55115mm厚に対して10mm厚になっています。また天板はご覧のとおりきれいな大理石調の模様になっています。実物を目の前にすると、見ているだけでも「手元に置いておきたい」と思わせます。底板は写真では見えませんが、重量級トランスを支えるため5mm厚の黒塗装アルミを使っています。


両機種を正面から見る

同じく横から見たところ



2.AMP-5520の内部

 天板をはずすと内部はだいぶ混んでいます。アンプ部は前段と出力段の2枚構成になりました。電源部は、AM-55114倍ほども容量のある600VAのトランスを使っています。電源用平滑コンデンサは、AMP-5511製品版や最近のAMP-5511Kにも採用されている集合コンデンサ・ブロックが使われています。

 内部配線は、基本的に単線を使用していますが、入力及び切り替えスイッチまわりは混むため、シールド線を使用しています。


天板をした状態

天板を開けた状態

斜めから見た状態


 電源部を拡大した状態です。


電源部

大きくなった電源トランス(600VA)

集合コンデンサブロック


 アンプ部を拡大した状態です。


前段

出力段


 AMP-5520のブロック構成です。出力段はMOS-FETで、オーバーオールのDCサーボがかかっていますのでDCは出ません。

 通常の電圧入力はバッファを通してSATRI-ICに入ります。SATRI-LINKになると、バッファが省略されて直接SATRI-ICに入ります。SATRI-ICを使った電流出力付きDACと併用すると、DACI/V変換が不要になりますので、音質上さらに大きな効果が出ます。




3.AMP-5520試聴

 使用を始めて約1ヶ月経過しました。数日でエージングが終わってからAMP-5511と切り替えていろいろなCDを試聴しました(尚、音質の点から足を銅製のものに替えています)。

 AMP-5511は普通にセッティングするだけでバランスの良い音を出してくれますが、AMP-5520はそれだけでなく、各楽器の深みが一段と増し、重厚な音になります。オンマイクで録音されたボーカルなどは凄味すら感じます。これは、AMP-5511との最も大きな違いが電源にあるためです。AMP-5520の電源トランスは600VAのものが使われているため、ボリュームを上げるに従って音のスケールがそのまま大きくなって行きます。音量を上げてもヒステリックになったりせず、スケール感が出て来ます。

 スケール感だけでなく、音の品位も高くなっています。AMP-5511と比べると、落ち着きのある音で、どんなソースが来てもどっしり受け止めてくれる感じです。

 音場感が良く出るので、今まで良く聞えなかった音が埋もれていたのが聞こえてきます。今鳴っているどれかの音を識別して聴こうとするとちゃんと聞き取れます。こうなると、ライブ演奏のCDを使って「スピーカーからどれだけ音が離れるか」という視点で聴いてみたり、「何か隠れた音がないか」というあら探し的な聞き方も可能です。

 そこで、古い録音のクラシック、ボーカル、ジャズなどを聞いてみると新しい発見があっておもしろいです。録音は古いながらも、必要な音がちゃんと入っているのがわかります。これら古い録音や海賊版のライブ演奏は、自宅のシステムで聴くとラジオのような狭いレンジの音に聞こえますが、AMP-5520で聴くと当時のマイクで録った感じがわかるような鳴り方になり、とてもラジオとは言えなくなります。

 次に、AMP-5520に新しく追加されたSATRI-LINKの音を聴いてみます。SATRI-LINKは、電流アンプのSATRI-ICに直接入力できる入力端子なので、電流出力を持つ機器としか接続できません。現在、市販の製品ではこのような機器はありませんので、試聴用にSATRI-ICを使って電流出力が取り出せるDACを提供していただきました(このDACは現在試聴できます)。このDACは、数年前に発表したDAC-5710というDACを改造したものです(注:DAC-5710は現在販売されておりません)DAC-5710I/V部以降をSATRI-ICで受けて軽いローパスフィルタを付けたものです。I/V部と言っても、SATRI-ICを使って電流出力を取り出せば良いためI/V変換はせず、そのまま電流出力を出すだけです。この方式の利点は、従来のケーブルに信号電流を流す方式のため、接点の抵抗やケーブルが持っている固有の癖をある程度回避できるところにあります。

 トランスポートに電流出力DACをつなぎ、その出力をAMP-5520SATRI-LINK端子に接続して出て来た音は、今まで聴いて来たCDの音とは明らかに違うものでした。どう違うか一言で言うのは難しいですが、これまでCDの音に共通して感じてきたCDらしいはっきりした音(悪く言えば硬い音)がなくなり、パチパチノイズのないレコードに近い滑らかな音になります。もう1つ感じるのは、今まで左右のスピーカーから出ていた音が、スピーカーの中や周囲に広がり、目を閉じるとスピーカーの存在をあまり感じなくなるような鳴り方に変貌します。AMP-5520は、通常の電圧入力で聴いても良い音ですが、真価を発揮するのはSATRI-LINKを通した音であるような気がします。新規に組み合わせるDACとしては、DAC-2000が最適です。

定格
入力
電圧入力 x 3(入力インピーダンス100Kオーム)、SATRI-LINK x 2(入力インピーダンス4オーム)
ゲイン
26dB
推奨負荷
6〜8オーム(4オーム負荷については保証なし)
定格出力(1%歪)
50W+50W (8オーム負荷時。実測値:61W+61W)
周波数特性
10Hz〜50KHz
歪率
8オーム負荷 10W:0.41%(20Hz) 0.38%(1KHz) 0.36%(10KHz) 0.49%(100KHz)
8オーム負荷 0.1W:0.33%(20Hz) 0.32%(1KHz) 0.33%(10KHz) 0.71%(100KHz)
S/N(Aカーブ)
VRmax -106.5dB
VR3時 -106dB
VR12時 -102dB
VR9時 -90.5dB
寸法
470(W) x 120(H) x 365.5(D)
重量
15.8Kg
価格
¥500,000