●Vista,Windows7(64bit/32bit)+英語キーボードで親指シフトを使う

  ひと月ほど前、今さらながら親指シフトをやろうと思い立ちました。親指シフトの名前自体はOASYSワープロがあった頃から知ってはいましたが、あの特殊な形のキーボードを持っていませんでしたし、ローマ字入力で特に不満もなかったので横目で見ている程度でした。

 ところが最近はblogや掲示板などで日本語を書くことが多くなってきたため、ローマ字入力より早く楽に打てるといいな、と思い始めました。そこで親指シフトはいいらしいという噂を思い出しました。しかし、今さら親指シフトがやれるのか? OASYSワープロなんてとっくに販売終了だし、親指シフトキーボードがないと入力すらできないだろうと思って調べてみたところ、普通のキーボードでも何とかできるらしいことがわかりました。要するにスペースキーのところがまん中で2つに分かれているキーボードなら親指シフトに使えるようです。

 でも、親指シフトは初めてだし、最初は純正キーボードを使ったほうがいいんじゃないかということも考えましたが、今販売されている純正キーボードってFMV-KB613しかないんですね。値段は\30,000と、私の予想をはるかに超える値段が付いています。キーの配置を見てみると、親指関係のキーはいいとして、リターンキーが小さいのが気になります。上から2段めに1段分の高さで小さめのリターンキーが付いてます。まずこれが気に入らない。というのも、私は小指が短いのでよく使うリターンキーが2段めにあるといちいち小指を伸ばして打たなければならず、これだけでも使いにくそうです。今使っているキーボードのリターンキーは2段めと3段めを使った大きなキーなのでとても使いやすいです。それから、使い道がよくわからない「実行」キーというのがあります。リターンキーの代わりに使えるらしいですが、普通ここには矢印キーがあるはずなので使い勝手が悪いです。OASYSワープロ時代と同じ感覚で作られているらしく、今の時代にはちょっと合わない気がします。そもそも「実行」の意味がよくわかりません。「これを押すと何を実行するんだろう?」と思ってしまいます。ということで、このキーボードは買う気になりませんでした。中古品を探したところ、FKB8579-661/EVが見つかりました。これはリターンキーが大きく、「実行」キーもないので気に入りました。USB接続なのも高評価です。なぜなら、今使っているPS/2キーボードを取り外さなくても使えるからです。両方つなげば同時にタイプすることもできます。親指シフトキーボードを使わないときはUSBを外すだけなので便利です。

 親指シフトキーボードを手に入れても、そのままでは親指シフト入力ができないのは知っていたので、親指シフトエミュレータをいくつか試してみました。親指ひゅんQ、Japanist、Q's Nicolatter、姫踊子草、親指コウズィなどを使ってみましたが、最終的にVista64を使っていることから、64bitに対応しているem1key_pc(em1keyのPC版)を使うことにしました。em1keyは元々モバイルPC用に作られたソフトですが、それを普通のPCで使えるように改良したのがem1key_pcです。em1key_pc自身はスクリプトエンジンで、起動時にそれ用のスクリプトファイルを読み込んで使います。このスクリプトファイルの1つに親指シフト用があり、これと組み合わせて使うと親指シフトができます。Oyayubiwmというスクリプトです。

親指シフト入力エミュレータem1key_pc
em1key_pc 親指シフトスクリプトエンジン
Oyayubiwm em1key_pc用の「親指シフト」動作スクリプト


 em1key_pcは、

 1. 64bit Windowsに正式対応。Vista(64bit)やWindows7(64bit)で動きます(スクリプトは32,64bit共通で使用可)
 2. 親指シフトキーを複数設定することができる
 3. キー割り付けがかなり柔軟にできる(英語キーボード用のキー割り付けも可能)

 という特徴があります。私にとってはどれも大切な機能です。

  1. 64bit Windows正式対応。Vista(64bit)やWindows7(64bit)で動きます
    em1key_pc以外の親指シフトエミュレータは32bitでしか動作保証がありません。32bitアプリケーションだけを動かすならVista64にインストールして動かすこともできますが、うまく動かなかったり、動いても32bitアプリケーションしか動きませんので、今後のことを考えると不安を持ちながら使うことになります。それを避けるには64bit Windowsに対応した親指シフトエミュレータがどうしても必要です。em1key_pcは既にWindows7(64bit)対応を明記しています。将来性から見てもem1key_pcを使わない理由はありません。一方で、ノートPCはまだ32bit CPUの機種が多く残っています。これらに64bit OSは乗せられません。32bitのノートPCを使う間は32bitで動く親指シフトエミュレータを使わなければなりませんが、em1key_pcは32bit Windowsでも親指シフト用スクリプトがそのまま動くので、古いノートPCでも必要なファイルをコピーするだけでそのまま使えます。私の手持ちのノートPC全て、英語キーボードで動いている64bit Windowsマシン全てでem1key_pcが動いています。この対応力の広さは他の親指シフトエミュレータではできないことです。
     
  2. 親指シフトキーを複数設定することができる
    他の親指シフトエミュレータは、変換、無変換キーを1つずつ指定できるのが普通ですが、em1key_pcは3組まで指定できます。種類の違うキーボードをつないで同時に親指シフト入力をしようとすると、親指シフトに割り当てるキーが違った場合、いちいちスクリプトを読み直すためにエミュレータを一旦終了させて再起動しなければなりません。これはかなり面倒です。複数の親指シフトキー設定ができると、設定を一切変更しないで同時に両方のキーボードで親指シフトできます。

    また、ノートPCで親指シフトをしようとすると、日本語キーボードで親指シフトをしなければなりませんが、普通は「無変換」キーが「左親指シフト」に、「変換」キーが「右親指シフト」に割り付けられています。親指シフトを覚えると親指はいつも中央付近に置きますが、日本語キーボードは中央にスペースキーがありますので、スペースキーを左右どちらかの親指シフトキーとして使いたくなります。右親指をよく使うなら、スペースキーを2番めの「右親指シフト」キーとして設定できると、右親指はスペースキーと「変換」キーのどちらを押しても良くなるので使いやすくなります。左親指をよく使う場合はスペースキーを「左親指シフト」キーに設定すればスペースキーと「無変換」キーのどちらを押しても「左親指シフト」として使えます。
     
  3. キー割り付けが柔軟にできる(英語キーボード用のキー割り付けも可能)
    em1key_pc以外の親指シフトエミュレータは、日本語キーボードを使うことを前提にしているものがほとんどです(英語キーボードを選択できるオプションを持っているエミュレータも一部あります)。今使っているのがPS/2用の英語キーボードなので、このキーボードで親指シフト入力ができないと不便です。実際に動かしてみると、キー配置とキーコードが日本語キーボードと違うため、一部のキーがNICOLA準拠の配列と違ってしまいます。これをNICOLA準拠の配列で打てるようにするにはキーをうまく入れ替えられる機能を持っていないといけません。em1key_pcはスクリプトで各キーの動作を決めているので、そこを変更すれば英語キーボードでも親指シフトができます。

●英語キーボードで親指シフト(「B割れ」タイプ)

 今使っている英語キーボードはNMBのRT8255CWE+Rという機種で、だいぶ前に販売終了したモデルです。メカニカルキーの感触が良く、英語を打つときやローマ字入力で使うには快適に使えるキーボードです。英語キーボードはひらがなが刻印されていないのでシンプルで見やすいことと、メカニカル式のキータッチが好きで使っています。ひらがなが刻印されていても長年ローマ字入力のタッチタイプでしたので、キーボードを見ながら打っているわけではないのですが、キーボード右側の記号キーはあまり使わないので、これらを打つときは時々見てしまいます。そのときひらがなが邪魔になります。元からJISカナ入力をするつもりはなく、親指シフトで打つときもJISカナ文字は邪魔なのでないほうが都合が良いです。


RT8255CWE+R

 これを使い始めた頃は親指シフトをすることなど全く考えもしませんでした。このキーボードはたまたまスペースキーが中央で半分に分かれていて、左半分が[BACKSPACE]キーとして使えるようになっています。この[BACKSPACE]キーはスペースキーとしても使えるように変更できますが、親指シフトで使うにはこのままのほうが良いです。左右の「親指シフト」として使うキーのコードが違っていたほうがキー割り付けがしやすいからです。現在販売されている英語キーボードにもスペースキーが分かれているものがありますが、どちらも同じスペースキーのコード(0x20)を発生するものだと、左右どちらの親指シフトキーか区別がつけられないので親指シフト用には使えません。このようなキーボードを改造して使うという荒技もありますが、けっこう苦労するようです。RT8255は英語キーボードなのにそのままで親指シフトができる数少ないキーボードと思います。

 というわけで、RT8255とFKB8579-661/EVのどちらでも親指シフトができるようにem1key_pc用スクリプトを変更しました。RT8255は英語キーボードなので、Windowsに組み込まれているキーボードドライバーも英語キーボード用のドライバーが入っています。日本語キーボードと違う部分を直してNICOLA配列で打てるようにしました。

英語キーボード(RT8255)での親指シフト割り当て

割り当てたキー
動作
右ALT 漢字ON/OFF(秀CAPS64で設定)
スペース 右親指シフト、「単押し」で変換(ATOK、MS-IME)、空白入力
[BACKSPACE] 左親指シフト、「単押し」で[BS]キーとして動作


[em1key_pc用 : RT8255CWE+R(FKB8579-661/EV(USB)兼用)親指シフト用スクリプト]

em1key_pcで動くRT8255CWE+R用(FKB8579-661/EV(USB)兼用)スクリプト


●スペースキーの長い英語キーボードでも親指シフト


 RT8255は親指シフト用には最適ですがもう入手できないので、寿命が来て使えなくなると困ってしまいます。そこで、スペースキーが長い英語キーボードでも親指シフトが使えるようにできないか検討してみました。

 まず、英語キーボードで親指シフトに適した製品を探します。英語キーボードはスペースキーの左右にそれぞれ[ALT]キーがあります。RT8255ではスペースキーを「右親指シフト」に設定していたので、左親指シフトキーは自動的に左[ALT]キーになります。右[ALT]キーは[漢字ON/OFF]キーとして使うことにします。一般的な英語キーボードでは左[ALT]キーが左に寄りすぎていて、「左親指シフト」が押しにくくなります。普通は、[X]キーの下あたりに左[ALT]キーがありますが、これでは左親指をかなり内側に曲げないといけなくなり、つらいです。せめて[C]キーの下あたりに左[ALT]キーがある英語キーボードなら使えそうです。そういう英語キーボードを探します。機種は少ないですが1つ見つけました。Microsoftのナチュラルキーボードです。[C]キーの下に左[ALT]キーがありますね。


Microsoft Natural Keyboard(英語版)

 [C]キーの下に左[ALT]キーがあると、左手のホームポジション[F]のほぼ真下になるので親指が無理なく置けます。右手の親指はローマ字入力をしていた頃からスペースキーで漢字変換させる習慣が付いているので、右手で押すことに慣れています。このキー配置ならそれほど無理なく親指シフトができそうです。

スペースキーの長い英語キーボードでの親指シフトキー割り当て

割り当てたキー
動作
右ALT 漢字ON/OFF(秀CAPS64で設定)
スペース 右親指シフト、「単押し」で変換(ATOK、MS-IME)、空白入力
左ALT 左親指シフト

 スペースキーは、「右親指シフト」キーとして使いますが、未変換文字があるときに「単押し」すると漢字変換を行い、入力文字がないときに「単押し」すると空白が入ります(スペースキーで変換したり空白が入るのはMS-IMEやATOKの機能です)。1つのキーで三役こなしますので、一番疲れにくい右親指で押すのが良いと思います。

 ところで、左[ALT]キーはWindowsでも使っている(ウィンドウメニューへのフォーカス移動)キーなので、これをそのまま「左親指シフト」キーに設定しても、同時にWindowsの機能も働いてしまい、うまくいきません。左[ALT]を押しただけで、ウィンドウのメニューにフォーカスが移ってしまうので、まともに親指シフト入力ができません。

 この機能を止めるのは簡単ではないので、他の手を考えます。あまり使われずに余っているキーを左[ALT]キーと入れ替えればうまくいきそうです。メインキーボードにあるキーはどれも重要で、へたに入れ替えられないキーばかりなので、ファンクションキーのどれかと入れ替えられないか考えます。[F1]〜[F5]まではWindowsで使っていますし、[F6]〜[F11]まではATOK2009で使っています。[F12]も使われていますが、移動しても大丈夫そうなので[F12]と左[ALT]を入れ替えます。入れ替えにはキー変更ソフトを使います。ここではChangeKeyというフリーソフトを使います。ちょっと古いソフトですが使ってみたところ、Vista64でも動きます(当然、Vista32でも動きます)。たぶんWindows7(64bit)でも動くはずです。ChangeKeyで一度キー設定を変更すると、Windowsのレジストリにあるキーコード表を書き換えるので、再起動すると、それ以降親指シフトをしないときでもずっとキー割り当てが変わったままになります。元に戻したいときは再度ChangeKeyを実行すれば戻せますので、「元に戻せなくなるんじゃないか」という心配は不要です。また、ChangeKeyはメモリに常駐したりしませんので、必要なときに動かすだけでよく、邪魔になりませんし、変な挙動もしません。

 


ChangeKeyの初期状態の画面
(日本語キー配列で表示されますが英語キーボードの設定で使うので英語キーにないキーは無視します)


左[ALT]に[F12]を割り付け、左[Windows]キーに左[ALT]キーを割り付けます
(左[CTRL]キーと左[CAPS]キーも入れ替えていますが、好みで設定しているだけで、親指シフトとは関係ありません)


 左[ALT]に[F12]キーを割り当てた後、再起動すると左[ALT]キーを押しても[F12]を押したのと同じことになります。ただ、これだけだと、本来の左[ALT]キーが必要になったときに困りますので、左[ALT]キーをその左隣りの[Windows]キーに割り当てておきます。

 これでキーの入れ替えは終わりです。後は、左[ALT]キーを「左親指シフト」キーとして使えるようにem1keyのスクリプトを変更すれば、スペースキーの長い英語キーボードでも親指シフトができるようになります。


[em1key_pc用 : スペースキーの長い英語キーボードで使う親指シフト用スクリプト]

em1key_pcで動くスペースキーの長い英語キーボード用スクリプト



●日本語キーボードとVista64(Windows7-64)で快適親指シフト生活


  英語キーボードで親指シフトにする方法を説明しましたが、特に英語キーボードにこだわらないなら、打ちやすい日本語キーボードを選び、em1key_pcを動かせばたいていのキーボードで親指シフトができます。選択肢の数から言えば、圧倒的に日本語キーボードのほうが数が多いので選びやすいです。

 最近は、日本語キーボードでも英文字だけ印刷されていてかな文字が印刷されていない製品がありますし、たいていの日本語キーボードはスペースキーが小さくて、スペースキーの左に「無変換」キー、右に「変換」キーがありますから、em1key_pcでこれらのキーを親指シフトキーとして使うように設定するだけで親指シフトができます(実はOyayubiwmは最初からそう設定されています)。


IBM日本語キーボード

富士通日本語キーボード


  写真はIBMと富士通の日本語キーボードです。ホームポジションの[F]と[J]に人差指を置いたとき、その真下に親指が来るので、その位置に「変換」「無変換」キーがあるキーボードが良いです。また、これらのキーの幅ができるだけ広いほうが良いです。上の2つのキーボードは「変換」「無変換」キーの幅が文字キーより大きくなっていて打ちやすそうです。キーの位置も[F]と[J]の真下にあります。

 Oyayubiwmに入っているscripptcommand.txtをem1key_pcと同じディレクトリに置いてem1key_pcを起動すると、「変換」「無変換」キーが親指シフトキーとして使えるようになり、親指シフト入力ができます。ところが、普段、本物の親指シフトキーボードを使っていると、日本語キーボードで親指シフト入力をしたとき、だんだんと親指が中央寄り([B]キーの近く)に動いてきてしまい、スペースキーを押してしまいます。そこで、スペースキーも左右どちらかの親指シフトに割り当てられれば、もっと実用的で使いやすくなります。

 em1key_pcには、このようなときのために、親指シフトキーを最大3組まで設定できるようになっています。標準では1組しか使っていませんから、2組めにスペースキーも「右親指シフト」キーとして使うように設定します。第2「右親指シフト」キーとしてスペースキーを設定したスクリプトを使うと、右親指はスペースキーを押しても、「変換」キーを押しても「親指シフト」になります。また、どちらのキーも「単押し」すれば漢字変換キーとして動きます。右手の親指を[B]キーの近くに置いておけるので、本物の親指シフトに近い操作感が得られます。

 スペースキーを「左親指シフト」キーに割り当てることもできます。その場合は「無変換」キーと「スペース」キーの両方が「左親指シフト」キーとして動きます。

[em1key_pc用 : 日本語キーボードで「スペース」「変換」キー両方を右親指シフトに設定したスクリプト]

日本語キーボードで「スペース」キーと「変換」キー両方を「右親指シフト」に設定したスクリプト


日本語キーボードで使いやすい親指シフトのキー割り当て
割り当てたキー
動作
右ALT 漢字ON/OFF(秀CAPS64などで設定)
変換 右親指シフト、「単押し」で変換(ATOK、MS-IME)、空白入力
スペース 右親指シフト、「単押し」で変換(ATOK、MS-IME)、空白入力
無変換 左親指シフト


★キーボード親指化キット

さらに、何が何でも中央で分離した親指シフトキーボードにしたいときは、ちょっとした器具を付けて親指シフトにしてしまう手もあります。 東プレRealforce用に出ています。親指シフトキーの背が高くなりますのでノートPCでは蓋が閉じなくなるかも知れませんし、打鍵感が変わりそうですが、上記の方法でもまだ不満なときに試してみると良いかも知れません。

キーボード親指化キット
 


●英語キーボードとUSB親指シフトキーボードをVista64、Windows7-64で使う

 普段はPS/2にRT8255をつないで使いながら、ときどき親指シフトキーボードで打ちたくなったときにUSBにつないで使えると便利です。富士通の純正親指シフトキーボードFKB8579-661/EVをUSBにつないで親指シフトができるようにNICOLA化しました。日本語だけを大量に入力したいときはこちらの親指シフトキーボードで入力し、ちょっとした文章だけならRT8255で済ますような使い方ができます。

 RT8255と最も大きく違うのが親指シフトキーです。見た目が違うという意味ではなく、キーを押したときに発生するキーコードが違います。RT8255では「右親指シフト」にスペースキー、「左親指シフト」に[BACKSPACE]キーを割り当てています。 FKB8579-661/EVは本物の親指シフトキーボードなので、「左親指シフト」と「右親指シフト」専用キーがあり、このキーを押したときに発行されるキーコードがRT8255と違っているので、それに合わせてem1key_pc用スクリプトに第2「親指シフト」キーを設定する必要がありあます。このようにすると、どちらもうまく動くようになります。ただ、このままでは独立して付いている「変換」「無変換」キーも親指シフトキーとして動くだけなので、「変換」キーを押しても変換してくれません。動かない理由は、「親指右」と「変換」キーが同じキーコードを出していて、そのコードがスペースキーのコードと違っていたからでした(MS-IMEやATOKはスペースキーを押さないと変換動作をしてくれません)。「親指左」と「無変換」キーも同じキーコードを出していますが、MS-IMEやATOKの無変換動作と違うキーコードでした。これを何とかしないと「変換」「無変換」キーがただの飾りになってしまいます。個人的には「親指右」キーの「単押し」で変換が動いてくれれば良いので、「変換」「無変換」キーは動かなくてもかまわないのですが、Japanistで試してみたところ、(当たり前ですが)4つのキーとも全部動いたので、em1key_pcでも動くといいな、と思いました。それよりも「親指右」の「単押し」が動かないことのほうが重大問題でした。


FKB8579-661/EV

FKB8579-661/EVの「単押し」キー割り付け問題に対応

  FKB8579-661/EVは純正だけあって、親指シフトキーの下に「変換」「無変換」キーが付いています。日本語キーボードにも「変換」「無変換」キーがありますが、純正品のように親指シフトキーの下ではなく、スペースキーの左右に付いています。逆に、日本語キーボードには「親指シフト」キーがないため、「変換」「無変換」キーを「親指シフト」キーとして使います。FKB8579-661/EVには「親指右」「親指左」「変換」「無変換」の4つのキーが全部付いていますが、「親指右」と「変換」キー、「親指左」と「無変換」キーはどちらも同じコードを発生するため、どちらを押しても同じキーとみなされてしまいます。当初、em1keyのスクリプトでは「親指右」「親指左」キーの設定はうまくできましたが、「変換」「無変換」キーは「親指右」「親指左」と同じ扱いにされてしまったため役に立ちませんでした。親指シフトとして使うときは「親指右」「親指左」キーを使うので、同じキーコードを出しているからと言って、わざわざその下にある「変換」「無変換」キーを親指シフトとして使う意味はないからです。入力した文字を変換するときは、「親指右」キーの右隣りにある「空白」キーを押せば変換できるので、「変換」キーはなくても間に合います。当初はこの状態で使っていました。

 ところが、しばらく使ってみたところどうも具合がよくありません。英語キーボードで親指シフトをしていたときは「右親指シフト」をスペースキーに割り当てていたので、変換するときにスペースキーを押す癖が付いていて、変換しようとしたとき、無意識に「右親指シフト」キーを押してしまいます。その右にある「空白」キーを押すにはわざわざ親指を右にずらして隣りの「空白」キーを押さなければなりませんが、この動作がとても煩わしく感じます。文節変換では1つの文章を入力する間に数回は「変換」キーを押しますので、このちょっとした親指の動きは、文章を書けば書くほど累積していきます。

 ところで、NICOLAの仕様では「親指右」キーに「変換」機能も割り当てています。「親指右」キーを「単押し」すると「変換」動作をするように規定しています。同じく「親指左」キーを「単押し」すると「無変換」動作を行います。独立した「変換」「無変換」キーがないと親指シフトができないようでは専用キーボードがないと使えなくなるので、このように決めたらしいのですが、そのおかげで英語キーボードでも親指シフトができるようになった反面、本物の親指シフトの「変換」「無変換」キーが余った形になりました。

 個人的には、本物の親指シフトキーボードでも「親指右」キーの「単押し」で変換できるなら英語キーボードと同じアクションで親指シフトができるので不満がありません。「いぬ」(犬)を入力するとき、「い」はシフトなしでそのまま入力、「ぬ」は「親指右」キーと「ぬ」を同時打鍵し、そのままもう一度「親指右」キーを「単押し」すると変換して「犬」となります。右の親指を他のキーに移動させずに変換までできるのでとても便利です。この動作は「変換」させるたびに右親指を動かさなくて良いので、一番効率の良い方法だと思います。「親指右」キーの「単押し」で変換してくれるなら親指シフトキーボードに独立して付いている「変換」キーをわざわざ使う必要性を感じません。

 これを実現するには、FKB8579-661/EVの「親指右」キーに「単押し」時の動作を指定できればいいのですが、「単押し」の設定方法がわかりませんでした。そこで、em1keyの作者(Hiroyuki Ogasawara)さんに相談したところ、すぐに解決策を教えていただき、無事動かすことに成功しました。作者のHiroyuki Ogasawaraさんに感謝致します。Oyayubiwm1.46ではこの機能が追加されていますので、簡単に親指シフトキーの「単押し」機能が使えるようになりました。

 親指シフトキーを「単押し」したとき、スペースキー(0x20)と同じコードを出すと、ATOKやMS-IMEがスペースキーが押されたと認識して変換してくれます。RT8255はこのようになっていたので、「単押し」設定をしなくてもスペースキーで変換できていました。ところが、FKB8579-661/EVの「親指右」キーは別のコードを出していたため、「単押し」設定をきちんとしてやらないと変換しなかったというわけです。ここを修正したことで、「親指右」と同じキーコードを出している「変換」キーも「単押し」で自動的に変換するようになりました。「変換」キーを動かすことを期待していたわけではありませんでしたが、「変換」キーとしての役割をしてくれるようになりましたので、「変換」キーを使う習慣がある方にはうれしい機能だと思います。これでもうJapanistがなくても同じように動きます。「無変換」キーにも「単押し」時の設定を追加しましたので、「無変換」キーを押したときも無変換動作をするようになりました。これで純正親指シフトキーボードもほぼ完璧なキー割付ができました。


●日本語キーボードとUSB親指シフトキーボードをVista64、Windows7-64で使う

 英語キーボードとUSB親指シフトキーボードの組み合わせではけっこう苦労しましたが、日本語キーボードを使っていて、それにUSB親指シフトキーボードを追加して使う場合はほとんどそのまま動いてしまうので楽です。私は、メインPCでは英語キーボードを使っていますが、ノートPCはキーボードを交換できないので日本語キーボードのままem1key_pcとOyayubiwm1.46を組み込み、親指シフト化して使っています。このノートPCのUSB端子にFKB8579-661/EVをつなぐと、そのまま親指シフトが使えます。どちらのキーボードも両方同時に使えます。日本語キーボードが付いているWindowsには日本語キーボードドライバーが入っているので何もしなくてもうまく動きます。

 

[各キーボードでの親指シフト割り当て状態]

 em1key_pcで各種キーボードに設定した親指シフトの割り当てと、押したときの動作です。


日本語キーボード(ノートPC)での親指シフト割り当て

割り当てたキー
動作
半角/全角 漢字ON/OFF
変換 右親指シフト、「単押し」で変換
無変換 左親指シフト、「単押し」で無変換
スペース 空白入力、変換(ATOK、MS-IME)



USB純正親指シフトキーボード(FKB8579-661/EV)での親指シフト割り当て

割り当てたキー
動作
半角/全角 漢字ON/OFF
親指右 右親指シフト、「単押し」で変換
親指左 左親指シフト、「単押し」で無変換
スペース 空白入力、変換(ATOK、MS-IME)
変換 変換
無変換 無変換



[em1key_pc用 : 日本語キーボード、および(USB)FKB8579-661/EV用親指シフトスクリプト]

日本語キーボード、およびFKB8579-661/EV(USB)用スクリプト(Oyayubiwm1.46と同じ)

使用上の細かいことなど

・RT8255CWE+Rは英語キーボードなので英語キーボード用ドライバーが入っている状態で動いています。お使いのWindowsに英語キーボードドライバーが入っているか、日本語キーボードドライバーが入っているかによって動作が違いますので、それ用のスクリプトを使ってください。

・英語キーボードで使用するときのFKB8579-661/EVのNICOLA化は、NICOLAで規定しているひらがなと記号だけしか設定していません。それ以外の記号はキーの刻印と合っていませんので、必要な場合は適宜修正する必要があります。親指シフトで日本語の文章をバシバシ入力するだけならそのまま使えます。

・掲載しているスクリプトはOyayubiwm1.46を元にしています。

・ATOK2009で使用すると、[P]と[Z]キーで半角の[.]と[,]が表示されますが、[Z]キーを連続して押すと[.る.る.る]と表示される症状が出ました。そこで、[Z]、[P]キーを押したとき全角で出るように変更しました。これにより、[Z]キーを連続して押しても[...]と正常に動くようになりました。

・ATOK2009の設定は、ATOK2009の「プロパティ」→「キー・ローマ字・色」で、MS-IMEを選択して下さい。WXG、VJEの設定でも動くようですが、ATOK2009を選択すると[Z]キーの連続打ちで[.る.る.る]と表示されたり、英語固定モードになったりしてうまく動きません。