使いこなしコーナー

SATRI回路の解説

SATRI製品FAQ

SATRI製品の鳴らし方
 アース

 エージング
 マルチシステム構成

チューンアップルーム
 自作SATRIプリ
 抵抗比較実験1
 抵抗比較実験2
 抵抗比較実験3
 抵抗比較実験4
 抵抗比較実験5
 ダイオード比較実験1
 LClock XO実装1
 LClock XO実装2
 DAC-2000改造1

トップページ



(AudioAmigo誌 No.6号より。転載許可済み)

SATRI誕生秘話
増幅手法の根本的な見直し

この記事は、SATRIアンプがどのようにして発明され、オーディオ技術として優れているか、このインタビュー記事から伺い知ることができます。開発者本人が明かすSATRIアンプ誕生物語です。


増幅手法の根本的な見直し

-- AudioAmigo誌の第5号の記事で、ミニコンポ?の「モルフェウス」を知って、音を聴いて「これはちょっとちがうな」と思い、ここに使われているSATRI回路に興味を持ちました。早速、SATRI回路のICと、テクニカル・レポートを送って項いて読んでいるうちに、これは設計者から直接話を間いた方が早いんじゃないか。そう思って、熊本へやってきたわけです。

 遠路はるばる来て項いて恐縮です。あのテクニカル・レポートは、SATRI-ICを使って頂く人のために書いたものですから、一般の方には理解しにくいかもしれませんね。

-- そう思ってやってきたわけです。AudioAmigo誌はいわゆる専門誌ではありませんので、一応、誰が読んでも関心さえあれば、話として解るという線を狙っています。専門的なことは解らなくても話として縦得できればそれはそれで意味がある、という立場をとっています。要するに内輪話が間きたいわけです。

 おっしゃる意味はよくわかります。私も高校時代に絵を描いたり、小説のまね事を書いたりしましたから、根は文科系の人間かもしれません。

-- その辺の話も含めて、それじゃあよろしくお願いします。

 さかのぼれば、個人的な話になってしまいますので、とりあえず、SATRI(SATORIではない)回路にまつわる話から始めさせて項きます。


諄々と語る永井さん。熊本のティールーム(1998.6.19)

  現実に物が出来たのはパワーアンプでしたが、ことの起こりは、D/Aコンバーターだったんです。私もLP時代から音楽を聴いてLPの音を気に入っていましたが、CDLP以上の音を出さなければ、と思っていましたから、DAC(D/Aコンバーター)に着目していました。いろいろな回路を試してみたのですが満足できる音は出なかった。そこで気づいたのが負帰遠です。どうもここに問題がある。

-- どこのNFB(負帰還)ですか。


時間の哲学

 出力段のオペアンプです。アナログのローパス・フィルターですが、これを回避するにはどうすればよいか考えているうちに、従来の手法ではダメだということがわかった。今までは電圧でやっていましたが、これが時間に影響しているんじゃないか。

 そういうことを考えながら、工場のシステムを立ち上げる仕事に携わっていましたから、三箇月ほど出張することになった。その出張先(宇都宮)の古本屋で偶然見つけた本の中にヒントがありました。

-- 本のタイトルは?

 朝日出版から出ている哲学選書だったかな、「音を視る、時を聴く」という題名でした。哲学者の大橋荘蔵さんと、ミュージシャンの坂本龍一さんの対話集です。その対談の中に「ただ今」とは何か、というテーマが出てくる。今というのは瞬間じゃない、ということから論じられていました。もし時が止まったら、人間は知覚することができない。だから、今というのは、時間の幅を持っている。それでは、その時間幅はどれくらいの長さだろう。大橋さんは、仏教用語の「刹那」(せつな)が、時間の単位を表していると言い、その長さは約30分の1秒だと語っている。一方、坂本龍一さんは、「いや、ミュージシャンは干分の1秒でもわかる」と反論している。だとすれば、ミュージシャンにとっての「ただ今」は、千分の1秒以下じゃないか。

-- おもしろいですね。ミュージシャンがそうなら、オーディオも無視できない。

 それならば、DACにとって「ただ今」というのは、どれくらいの時間なのか。DACの時間の揺れというのは30ナノ・セック(nsec)くらいですから、1億分の3秒ですか。それがDACの規格なんです。それが間題になるということは、時間的に相当精度を上あげなくてはいけない。私の場合、100ピコ・セック(100憶分の1秒)くらいにして、やっとまとまった音になりました。だから、オーディオの場合は、100億分の1秒ぐらいが目標になりますね。

-- そんな微小な時間差を、人間が感じるんですかね。


アナログの時間連続性

 「CD臭い音」なんて言っているのは、それを感じているからでしょうね。それを考えて行くと、時間の違続性ということに直面します。アナログの音が良いと言いますが、アナログレコードの時間の基本は慣性質量なんですね。だから、フライホイールやターンテーブルに重いものを使い、止まり難いという性質を利用して、定速度で回している。

 機械精度が悪いと、長い時間の精度が悪くなって、ワウ・フラッターは出ますが、細かく時間がズレるということは起こらない。だから時間がつながっている。要するに、時間連続性に関しては、アナログは非常に良かった。

 CD、つまりデジタルでは、水晶発振子が時間の基準になります。水晶発振子には、1秒間に何回発振するかは規定されていますが、隣り合った発振周波数が、イコールかどうかはわからない。これに関しては規定がない。1秒間に100回なら100回発振すればいい、という考え方です。

-- 間隔は保証されていない?

 ええ、わからない。しかし、測定してみると、周波数のスペクトラムがスカート状になります。時間の振れが大きいと、広がるわけです。この時間の振れを誘発する要因は、いろいろ考えられます。たとえば電源のノイズなどですが、ノイズはランダムな出かたをしますので、平均化すると周波数の誤差にならないのです。

 このように、一つ一つが動いても、1秒間なら1秒間で、振動数が同じならば、同じだという判断になる。しかし、実際は微細なレベルで、時間は常に動いている。普通の音というのは、時間に即して存在していますから、土台の時間軸が動くことに関しては、人開はものすごく敏感に反応します。

 だから、デジタルオーディオの場合も、100億分の1秒ぐらいの時問が間題になります。ところで、現状のアンプの時間精度はどうか。振り返ってみるとこれが出ていない。

-- 時間精度が出ていないということですか。

 そうなんです。その一番大きな原因は、増幅の原理そのものにかかっている。そのことに気づいたのは、DACを生かすために、あらゆる回路でアンプを作ったからです。どれにも一長一短があって、「これだ」という回路が見つからなかった。つまり、増幅の基本である、増幅素子の問題に行きついてしまうのです。

 悩み続けているときに、長崎へ行く用事ができたのですが、その帰りのフェリーの甲板で、遠くをボンヤリ眺めていました。すると実然、目の前に増幅回路が現れた。

-- あのウィリアムソン氏も、例のウィリアムソン・アンプを1947年に船の中で思いついたそうですね。あれは多量(20dB)のNFBをかけるというアイデアですが。


SATRIの由来

 そうですか。私の目の前に現れた増幅回路は、今までのものとは全然違う原理でした。それまでにも、増幅ということに関して、一旦、今までの手法をご破算にして考えたら、果たしてどんなものになるだろうかと模索していましたが、なかなかアイディアが浮かばなかった。それが一挙に現れた。

 早速、その回路でパワーアンプを作って、東京のオーディオ・フォーラムヘ持っていきました。ちょうどその頃、パソコン通信をやっていて、その伸間に加わっていました。フォーラムでは、開発の実況中継をやっていて、皆で試聴する機会もありました。

 僕は熊本だから、出席者の中では一番遠い。そこで最初に鳴らそうということになり、新しい回路のパワーアンプで音を出しました。すると、出席者が全員そのまま聴き込んじゃって、結局、最後まで僕のアンプを鳴らした。

 そのとき回路の説明をしましたが、その中で「今までの回路の考え方を一且捨てちやって、改めて増幅とは?と間い続けているうちに、こういう回路が生まれた」と話しましたら、誰からともなく「それは悟ったんだね」という声が出て、「それじゃサトリ回路だね」ということになった。それから何となくそういうネーミングになってしまったわけです。最後に試聴会場を賃してくださった方が、頼むからこのアンプを持って帰らずに、置いて行って欲しい、と言ってきかない。それがデビューでした。SATRI回路の。

-- いい話ですね。ロマンを感じます。折角の機会ですから、そのSATRI回路の増幅原理を、素人にもわかるように、話して頂けませんか。


SATRI回路の原理


試作中のパワーアンプ(AMP-5511)と
三菱の2S-3003スタジオモニター

 式を使った方が話が単純になりますからそれで進めてみます。増幅には増幅度がつきものですが、増幅度Aは、

A = Gm × RL

という式で表します。Gmというのは増幅素子で、真空管やトランジスタやFETに信号が電圧で入力されたとき、電流がどれだけ変化するか、という開係を示します。これも式で表せば、電流/電圧になります。RLは負荷抵抗です。

 ところで、Gmが直線(比例関係)であれば何ら間題は出てこないのですが、これが実際には非直線なんですね。カーブを描くんです。つまり、入力信号のレベルによって、増幅度(A)が変動している。この変動は、振幅方向だけじゃなく、時間方向にも影響するから厄介です。だから、細かなところで時間が動いてしまう。その時問の変動がけっこう大きいんです。DAC100億分の1秒に比べると、桁が3つくらい違います。

-- DACで間題になるのなら、当然アンプでも問題になるでしょうね。

 ところが、従来の増幅手法をいくらアレンジしても、A = Gm × RLの束縛からは逃れられない。結局、ここから逃れるためには今までの増幅手法を捨てるしかない。その捨てたあとに表れた新天地がSATRI回路だったわけです。

-- Gmからの解放ということですか。

 


SATRI回路の原理

 Gmは電流/電圧でしたから、式で表せば Gm = I / E ということになりますね。オームの法則で R = E / I になりますが、これから、 Gm = 1 / R とも書ける。

 これに A = Gm × RL を入れると、A = RL / R という式になります。

  ちょっとややこしいですが、これがSATRI回路の原理なんです。

 つまり、増幅に対して、非直線のGmが関わらないわけです。抵抗は関わりますが、抵抗は、一応、非直線性を持っていませんから、増幅の精度は保てるわけです。しかし、式はわかっても具体的にどうすればいいかということが長い間わからなかった。それが、フェリーの上でひらめいたわけです。


電圧増稲と電流増幅

 それは従来の考え方からすれば全く逆の発想です。これまでの常識からすれば、アンプの入力インピーダンスは無限大、出力インピーダンスはゼロ、これが理想ですね。これがSATRI回路では、入力インピーダンスはゼロ、出力インピーダンスは無限大になります。


SATRI回路の動作原理図
電圧信号は抵抗Rによって電流Isに変換される。

一般のアンプとSATRI回路の違い

 普通の増幅では、電圧を基準に考えていますが、SATRI回路では電流を基準に考えます。このように、何から何まで逆の発想になっていますから、今までとは根本的にちがった音が再現できるようになりました。そして、今までの増幅器の間題は全て解消されている。

 もっとも、SATRI回路による新たな問題点も出てきますが、今までの増幅の束縛から解放されたことのメリットは大きいと思います。

-- 電圧増幅と電流増幅の開係は?

 電圧増幅では、基本的に入力インピーダンスを無限大にして信号を受け取りますから、電流は流れない。電流が流れないから、エネルギーの受け渡しということもない。一方、電流増幅の場合は、入力インピーダンスをゼロにして信号を受け取ります。だから、電流が全部吸い込まれてしまう。ということは、全てのエネルギーを入口で吸い込んじゃう。逆に言えば、エネルギーがなければ電流で入力はできない。電流がゼロなら何も起こらない。これは今までの電圧増幅では、ほとんどエネルギーを必要としなかった、ということにもなります。

 だとすれば、カートリッジや信号源で作られた、音楽信号のエネルギーあるいは情報の一部しか受け取っていなかったのではないか、ということも考えられますね。現にSATRI回路にMCカートリッジをつなぐと今まで考えられなかったような情報まで取り出すことができます。DACの場合もそうですね。相手が電流出力の回路ですと、電流を全部吸い込んでしまいますから、その意味では、情報が濃くなるという感じですね。電圧が外側だとすれば、電流は中身じゃないか。オームの法則も電流ですからね。

-- 今までなぜ、電庄を基本に考えてきたのでしょうか。


GmHFE

 増幅素子として真空管とトランジスタを考えた場合、真空管が先に世の中へ出て来たからじゃないですかね。真空管は電圧でやらざるを得なかった。もともと電圧素子ですからね。トランジスタは電流素子なんです。電流で制御する素子だから、もしトランジスタが先に出来ていたら電流増幅が主流になっていたかもしれない。

 もともとトランジスタにマッチした、電流を主体とした回路があったはずです。そこまで行けなかったのは真空管時代の投計法というか、考え方が余りにも浸透していて、電流志向に転換できなかったからではないでしょうか。

 トランジスタでは、ベースに信号電流(IB)を入れると、コレクタ電流(出力=IC)が変化するのですが、この比率を HFE = IC / IB で表します。

 分母のIBはベース電流で、分子のICはコレクタ電流です。一般の考え方では、HFEが高いほど良いとされる。電流を流さないで出力電梳を制御できれば効率がいいと思うからですが、この考え方は電庄で制御したのと同じなんです。

 ベース電流が1mAで、コレクタ電流が100mA流れたとすると、HFE100になりますが、実は、これが電圧的な発想なんです。トランジスタの場合でも、Gmで増幅度を表しているからです。

 電流で考えるのならば、HFEなんてのは1でもいいんですよ。要するに、電流増幅の場合は増幅する必要はない。もし、この方向へ進んでいたら、また別の世界が出来ていたと思いますね。

-- 科学の世界でも、考え方は別途に必要なんですね。一般に科学的といえば、それ自体が考え方として正しいように錯覚しますが、考え方は科学とは次元がちがう。これはアナログとデジタルの関係についても言えますね。

 10というビットの考え方は、随分古くからありました。考え方としては、どっちが先だったかそれは何ともいえませんね。だからこれもひょっとしたらひょっとしていたかもしれない。

-- SATRI的な電流増幅の発想も、もっと早く出てきてもよかったんじゃないですか。

 僕も、これが自分独自の考え方かどうか気になりましたので、特許公報を、5,000件ぐらい調べてみました。その資料は今もありますが、これでみると似た考え方をしようとした人は何人かいたようです。アメリカにも何社か似た考え方を持ったところもありましたが、低抗だけで増幅するという考え方はない。方々で使われている、電流帰還という形ならありますが、これはあくまでも「帰還」という考え方が前提になっています。だから、負帰還(NFB)をかけずに抵抗だけで増幅するという考え方は前例がありません。SATRI回路の場合は、無帰還で使うことが基本になっています。帰還をかければ、結局抵抗では増幅できなくなる。

-- 本との出会いが大きいですね。

「あっ、音というのは時間なんだ」と気づかせてくれた、という点で大きかったですね。


コンデンサの立場と素性

-- 低抗で増幅する場合の、コンデンサの立場はどうなるのですか。

 増幅という観点からいえば、コンデンサはなくてもいいんですよ。だが、現実間題として、瞬間的に電流出力を必要とするときには電流を供給しなければなりません。そこで、瞬時に電流を供給できる理想の電源を考えた場合、それは電源のインピーダンスがゼロに近いことです。実際はゼロじゃないから、それをいかにゼロに近づけるかということです。

 ここで間題になってくるのが、コンデンサの素性です。僕も、普通のコンデンサを使ってきましたが、SATRI回路のアイデアが出てきて、改めて電源の問題がクローズアップされてきました。

 初期のSATRI回路では、電源の影響がモロに出てくる。そういう設計でしたから。電源がわるければ出力も悪くなる。だから、必然的に理想のコンデンサが必要になってくるわけです。それともう一つ、これはDACのデジタル回路の場合ですけど、電源側のノイズが時間変動になって出てくることもわかってきた。ここにもコンデンサが絡んでいます。

 それから、いろんなコンデンサを使いましたが、これというものが見つからなかった。ところがある試聴会で、柴崎 功さん(MJ「無線と実験」誌ライター、オーディオ評論家)が「このコンデンサおもしろいよ」と言って、現物を手渡された。そのコンデンサは柴崎さんがMJ誌のコンデンサの持集記事で紹介するときにテストされたコンデンサでした。

 「それじゃあ」ということで、そこにあったDAC1本つけ替えてみました。すると皆がびっくりするほど音が変わっちやった。それが、サンヨーのOS-CONと呼ばれるコンデンサでした。

 OS-CONの正体は有機半導体コンデンサです。有機半導体コンデンサの持性が良くて、いろんな産業機器に使われていることは知っていましたが、有機半導体という名前が何となくオーディオに結びつかなくて、それまでは便ったことがなかった。だいいち市販されていなかった。

-- サンヨーというのは、家電メーカーのサンヨーですか。オールスターの。


OS-CONの製造現場。佐賀三洋工業にて。

 そのグループですが、実際に生産しているのは、丸州の佐賀三洋工業株式会社です。ここ(熊本)から車で2時問ほど走れば工場へ行けます。そのとき、地元にいいコンデンサがあることに、気づいたわけです。

 これも偶然なんですが、僕の後輩が医療機器メーカーの技術部長をやっていたんですが、彼のところへ遊びに行ってOS-CONの話をしましたら「それウチでも使っているよ」と言うんです。医療機器のノイズ対策に便っていた。早速、無理を言って100個ほど分けてもらいました。

 持ち婦って測定してみたのですが、まさに理想のコンデンサに近い。いままでもオーディオ用と言われる有名なコンデンサを測定しましたが、その一番良いとされていたコンデンサよりも、OS-CONの方が30倍位いいんです。

-- 「一番良いとされていた」というのは「ブラックゲート」のことですか.


コンデンサの理想

 それはご想像におまかせしますが、コンデンサは二つのモード(性質)を持った素子ですから、「理想」という場合にもこの面から捕えなければなりません。

 一つは容量(キャパシティ)ですが、これは周波数が高くなればなるほど、インピーダンスが下るという性質を持っている。もう一つはインダクタンスです。箔を巻いたりしていますから、ここで、インダクタンス成分が発生します。このインダクタンスは、周波数が上れば上るほど高くなる。だから「理想」ということは、この二つの性質の絡み具合で決まることになります。

 つまり、周波数が上がると容量的に下がる。また、あるところからインダクタンス性が出てきて、周波数が上がれば、インピーダンスが上がる。だから、周波数的に見るとV字状の特性になる。それが理想的な特性です。しかし、普通のコンデンサの場合はVの底までインピーダンスが下がり切らない。VじゃなくてUになっている。お鍋の底みたいに、途中で平らになってしまう。ところが、OS-CONというのはインピーダンスがグンと下がってVの底までいくんですね。

-- 低インピーダンスということですか。


電源部にOS-CON2,000本使った
三洋の試作アンプ

 そうです。30倍くらい差があるというのはそのことです。これが実際に、何に効くかといえば、デジタル回路に使うと、輻射ノイズが半分ぐらいに下がります。それから、電源ノイズが減ります。電源ノイズが減れば、さきほど言ったジッター、つまりパルスの時間的な変動を押さえるのに効果が出てきます。だから、デジタル回路にOS-CONを使うと非常に音が良くなり、自然な感じになります。

 アナログ回路に使った場合は、電源インピーダンスが低くなり、過渡的な信号に対して速やかに電流を供給しますから、対応が速くなり、いわゆるスピード感が出てきます。しかも変なクセがない。

-- 低インピーダンス型のコンデンサというのは他にもありますね。

 フィルムコンデンサなどで、インピーダンスが低いと言われるものは、V字の例でいえば下るのは下りますが、Vを通り越してYまで下る。つまり、マイナスの抵抗まで下がってしまう。だから共振してしまう。共振すると必ずカラーレーションというか色がついてきますね。独特の色が。OS-CONにはそれがないからごく白然です。

-- いいことづくめですね。

 もちろん弱点もあります。有機半導体の性質上、高い電圧はかけられない。現在の最高電圧値は35Vです。しかも容量が少ない。普通に便える電圧は25Vですから、それ以上のところでは普通のコンデンサを使うか、直列に使うしかない。

 容量的には、10V耐圧、16V耐圧で、1000μFまで。6.3V耐圧で、2.200μFですが、目的によって割り切って使えばいいわけです。電圧の高いところは、普通の電解コンデンサを使うとか。

 SATRI回路の場合は、心臓部を低い電圧で動作させて、出力段のRL(負荷抵抗)が入るところだけ、電圧を上げるという手法を便っています。だからOS-CONをふんだんに活用しています。


電減伝送の可能性

-- 電流増幅という考え方があるのなら、電流伝送ということも考えられるんじゃないですか。

 それはこれからなんですが考え方としてはありますね(注:現在は既にSATRI-LINKとして実現しています)。これまでは電圧で伝送していましたから、エネルギーが全部伝送されていない。だから、周囲の影響を受けやすい。通常の電圧伝送の場合は、出力インピーダンスは低いのですか、ゼロではない。抵抗が入っていますから、ある程度インピーダンスは高い。しかも、受ける側のインピーダンスはさらに高いわけですから、外からの影響は避けられない。ノイズが入るということもありますが、もうひとつ、ケーブル自体の影響も出てきます。

 これを電流で受け渡しすると、ケーブル自体の特性、インダクタンスとかそういうものが補正される。なぜ補正されるかというと、電流伝送の場合は、送り出された電流は、必ず同じだけ戻ってくる。電圧波形がいくら歪んでも、電流だけは正しい波形で戻ります。

-- 戻るというのは?

 電流というものは、送り出されれば帰らなきゃならない。しかも、出したものと帰ってくるものはイコールになる。電流の場合は、必ず帳尻が合うようになっている。電圧の場合は、出したものに対して保証がない。出っ放しです。電流で送り出すということは、出力インピーダンスを、無限大で送り出すことですが、受け取り側の入力インビーダンズはゼロですから、全ての情報を吸い込むことができる。ここで何か新しいことができるんじゃないかと思って実験してみたのですが、ケーブルを100mぐらい延ばしても電流伝送では何も間題が起こらないことがわかりました。マルチアンプの場合はケープルも長くなりますから、いままではここで問題が起こっていました。これも電流伝送だとその間題が解消される可能性があります。

-- しかし、電圧と電流の間で、変換が必要ですね。普過は電圧伝送ですから。

 それはSATRI回路をIC化したチップを使えばいい。今度、僕のところ(バクーン・プロダクツ)から出すアンプには、入力インピーダンスがゼロになるSATRIリンク・ポジションを設けようと思っています。スイッチ切換で、電流モードと電圧モードが選べるようにしたいと考えています。

 一方、DACとかフォノアンブの高級なモデルには、出力のSATRI-LINKポジションを作って、無限大に近い出力インピーダンスで送り出せるようにする。


SATRI-ICの構造。(「SATRI-IC技術マニュアル」から)

 

-- 新しい製品群のラインアッブは?


SATRIアンプの構想

 SATRI回路をIC化したことで、増幅精度が飛躍的に向上しましたから、これをベースに製品化を進めたいと思っています。今までのアンプは、精度の悪いガタガタの部品を、負帰還というビスで無理やり締めあげて動かないようにしていたという感じですが、SATRI回路のIC化によって、精度が一新しました。ミクロンオーダーで加王した部品をハメ合わせて組み立てるようにしていますから、動作する土台が動かない。精度が向上すると、周囲の影響を受けないし、情報量がケタ違いに増える。それが音の精度にも出てきます。

 製品としては、パワーアンプとフォノアンプを最初に出すつもりです。パワーアンプは50Wのリーズナブルなものから100W300Wぐらいのものを考えています。フォノアンプも安いものから、気を配った高級機まで3種類ぐらい出したい。

 パワーアンプは、ドライバー回路に同じ基板を使いますから、出力段のトランジスタの数が変るだけ。ウチの場合は、一番安い「モルフェウス」から高価なものまで、音の面ではほとんど同じなんです。しかし、製品には、それぞれの狙いとこだわりがありますから、その点では変わってきますが、基本的には共通しています。同じスピーカーではあまり変わらないかもしれませんが、組み合わせる機器のグレードが上がればそれなりの差は出てくると思います。

-- 新しいモデルはいつ頃から?

 年内(1998年当時)には、何モデルか出せるはずです。

 いわば、逆転の発想から生まれる製品ですから楽しみですね。「逆も真なり」が「逆は真なり」ということになれば、オーディオを、根底から揺さぶることになるかもしれません。この揺さぶりは、オーディオの活性化につながりますから、歓迎されるでしょう。

 有難うございます。我田引水に聞こえるところもあると思いますが、僕なりに、本音を語ったつもりです。

 それから、技術的なことをもっと知りたい方は、インターネットのホームページがありますので、そちらの方を見てください。アドレスは、http://www.tachyon.co.jp/~bp/です。